表現のつまみ食い

表現のおいしいところをつまみ食いするエッセイです。

会社人間

 会社人間。そんな言葉が嫌いだった。会社にすべてを捧げ、愛すべき家族はほったらかし。そんなことを想像していた。

 

 そんな長年会社で活躍されていた方が先日亡くなった。あまり実感はなかったものの、葬儀の場に居合わせて真実を突きつけられるようだった。

 葬儀には家族以外にも共に働いていた方々がいらっしゃった。「お世話になった」や「あの方がいたおかげ」などの話を聞いたり、小耳に挟んだりしていた。それもひとりだけではなく、数十人規模だった。もともと頻繁に会うことがなかったが、意外な一面を知り、ときどき涙を浮かべていた。

 葬儀も終わりに近づいてきた。家族の方々が、遺品を整理していた話をしていた。

 中でも日記が見つかったそうだ。死のことも書かれていて、ご自身のことを考えていた様子も伺えた。

 それ以外にも愛すべき家族、特に奥さんのことが書かれていた。口下手で奥さんのことをどう思っているのかは知らなかった。でもこの日記の存在を知って、結婚した奥さんのことを思っていた。そして家族のこともちゃんと考えていた。

 

 想像していたことと違った。ちゃんと会社で生きていて、愛すべき家族もちゃんと考えていた。まだまだ知らないことが多いものだな。

 最後に、安らかにとお祈りいたします。