表現のつまみ食い

表現のおいしいところをつまみ食いするエッセイです。

天ぷらなのに(しぶそば 姫皮筍と菜の花天ぷらそば)

 ない。"あんかけ野菜そば"がない。今日はこれを食べようとしぶそばに寄ったが、変わってしまった。仕方ない、新しく登場した"姫皮筍と菜の花天そば"を頼んだ。

 

 緑がほんのり覗かせる菜の花の天ぷら。その上に赤い桜えびが振りかけてあった。緑と赤が器を彩るようだった。

 そばに隠れるのが姫皮筍だ。姫皮は筍の先端部分になる。色はいつもの筍と変わらない、クリーム色をしていた。これがそばの黒と対比する感じだ。ただ他の色が強く、こちらは影の主役になっている。

 

 そんな影の主役は少々コリコリした食感だった。でもそこまで固くなく、柔らかい印象だった。これが姫皮筍が他と違うところであろう。

 そこに桜えびの独特の味が混じり合う。食感の山の幸と味の海の幸。いいところを互いに補っているようだった。

 その傍らにいる菜の花の天ぷら。これが一番驚かされた。

 そもそも今日は天ぷらを食べる気分ではなかった。でも特有なストレートに来る油がなかった。それだけでなく、ほどよく感触を残っていて、菜の花の柔らかい感じがあった。

 天ぷらなことを忘れるようだった。これは間違いない。美味しい天ぷらだ。

 

 どれも紹介したい春の欲張りそば。姫皮筍と桜えびの心地よい対立。そんな中、しつこくない天ぷらで丸く収まった。


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