表現のつまみ食い

表現のおいしいところをつまみ食いするエッセイです。

共通するメッセージを探して(はるかなレシーブ&Free!-Dive to the Future-)

暑苦しい夏も終わり、季節が涼しい秋になってきた。7月から始まった夏シーズンのアニメも山場を迎えるのもあれば、既に最終回を迎えたものもある。

前シーズンを終えたあとも再放送として放映しているウマ娘。未だ熱が冷めきらず、二周目にも関わらず、春シーズン同様毎週の楽しみとなっている。思い出す一方で、初心に帰ったような気持ちになり涙する場面も多かった。チーム全体の成長は一視聴者の自分にも身近なように感じ、そんな想いが再び沸き立って来る。

アニメの話になると必ずウマ娘の話題を出すが、もちろんそれ以外にも盛り上がる作品はある。この夏シーズンはスポーツを題材とした作品がいくつかある。

 

夏らしいビーチバレーを題材とした「はるかなレシーブ」。「ご注文はうさぎですか?」や「こみっくがーるず」などでお馴染みの「まんがタイムきらら」系列で連載されている漫画をアニメ化している。可愛い女の子達がビーチでバレーをするのだが、穏やかながら闘志を燃やす姿は少し頼もしく見えてくる。

登場人物は最小限にとどめており、改めてメンバーを確認したが少ないと感じた。団体競技の為、チームごとにまとめると更に少なくなる印象だ。おまけに男性キャラクターが出ないのもこのきらら系列のお約束かもしれない。

団体競技だが個人の問題にフォーカスを当てている。一人ひとりの問題をじっくり注目して困難を乗り切るような印象が強く、遠回しな言い方は少ない。割とあっさりとしているがメッセージの重みはちゃんと残っているのも特徴的だ。回りくどいフェイント攻撃ではなく、誰もが知っているスパイクによるアタック重視な感じであろう。そもそもフェイントがこの競技では禁止されているので当然かもしれない。

 

水泳を題材とした「Free!-Dive to the Future(以下、Free!)」。夏らしい本作はアニメ放映では三作品目となる。水中でも男らしいたぎるようなレース展開はいつも胸を熱くさせる。

初回放映前に総集編があり、予習を兼ねて見たがより大所帯となった登場人物に驚いた。更に本作でも新たなキャラクターが登場して、更なる登場人物の把握が要求される。大所帯になる一方で意外な接点もあり、その接点がどうなっていくかも魅力の一つだ。

水泳は基本的に個人競技だが、対人関係での問題にフォーカスを当てている。これも大所帯となった登場人物が生み出したものだろう。その問題点も登場人物それぞれの視点に当てていき、気が付けば一つの問題が解消するような流れだ。絡まった糸を一つひとつ解くような感覚に近い。

 

こうして見ると色々な違いがある。団体競技を一人ひとりにフォーカスを当てる「はるかなレシーブ」に対して、個人競技だけど問題が多方向へ派生していく「Free!」。他にもあると思うが、そもそもターゲット層の違いはあるのかもしれない。

ただ二つには共通点が無いわけではない。例えば強さはどうだろうか。どの作品も昔のやり方が通用しなかったり、新しい問題が浮上したりとイベントが出てくる。ただ辛かっただけにとどめず、いかに強くなっていく過程も取り上げられる。考え始めたり、感じ取って自然と自分のものにしたり、そういう強くなる伏線が物語の鍵となる。

はるかなレシーブ」では過去の試合で主人公側にフォーカスを当てていて、負けた現チームメイト側の出来事は些細な感じに終わった。視聴者が忘れてしまった頃、今度は負けた側の話が登場してくる。そしてその回想シーンに立ち会って初めて鍵の存在に気づかされる。

そうしていくつかの鍵を頼りに人はどんどん成長していく。気が付いたらやがて大きくなっていき、本当の強さを手にしているかもしれない。「皆そうやって強くなっていく」という台詞はそういうのが含まれているかもしれない。

 

ターゲットなど形は違うかもしれない。でも例え小さなきっかけがいつの間にか大きな強さに変わっていく過程はどの作品にもあると思う。強くなる過程に立ち会えた時の喜びが作品への喜びに変わっていく。そして気が付けば毎週の楽しみにもなったりする。

作品を通じて人がどんどん強くなっていく。ただそれは作品にとどめず、実は作者のメッセージなのかもしれない。