表現のつまみ食い

表現のおいしいところをつまみ食いするエッセイです。

なぜこの曲が人生を変えたのか(朝焼けのクレッシェンド)

 人生を変えた一曲。あの曲のお陰で励まされたり、後押ししてくれたり。大げさかもしれないが、誰しもが一曲はあるだろう。「朝焼けのクレッシェンド」はそんな一曲である。

 

 「朝焼けのクレッシェンド」は、「アイドルマスターミリオンライブ」のキャラクターソングのひとつである。先日スマートフォンゲームである「アイドルマスターミリオンライブシアターデイズ」で、追加楽曲として登場しプレイすることができる。

 このキャラクターソングは主役である田中琴葉がアイドルになろうとする葛藤が描かれている。彼女はゲーム内では随一の真面目なキャラクターである。

 ただ真面目さがときに不安な影として現れることもある。特に不器用な部分があり、それを考え込んでしまい、自らを苦しめることもある。楽曲内の夜明けのような朝は不安の象徴かもしれない。

 その一方で困難を乗り越えようとする力もある。特に努力家な部分もあり、一度解決策を見つければそれを乗り越えようとする力もあったりする。楽曲でも「わたしで目覚めよう」などもそういう意思が現れているであろう。そしてメロディーも気がつけば朝焼けが出迎えてくれるようになる。クレッシェンドはだんだんと強くなるという意味だが、そういうのが含まれているかもしれない。

 

 なぜこの楽曲が人生を大きく変えたのか。それがわかるのは、ゲーム内では聞けない箇所にある。 それは2度目のサビを終え、間奏が終わったあとになる。ラストのサビに向けて盛り上がりに一役買うような、そんな余興のようなものである。

 

「迷いながら 手放せなかった 夢なら本物」(「朝焼けのクレッシェンド」より)

 楽曲で度々出てくるアイドルになることへの不安。彼女の不安は、最後の方まで解消されないことがよく伝わって来る。考え込んでしまうほどの真面目さは田中琴葉らしさがにじみ出ている。

 ただ彼女らしさはそこだけではない。彼女も迷い、不器用でありながらも乗り越えようとする意志はある。「アイドルになるのはなぜか」という問いかけを何度も行ったのが伺える。

 そしてその答えは複雑そうかと思いきや、意外と単純ものだった。それに気が付いたとき、彼女だけでなく多くの人は目覚めようとするのだ。何度悩んでも手放せないもの、それが本当の夢ということを。