表現のつまみ食い

表現のおいしいところをつまみ食いするエッセイです。

異変が起きるTHE iDOLM@STER MILION LIVE! THEATER DAYS

携帯ゲームGREEアイドルマスターミリオンライブ(以下、ミリオン)とアプリゲームのアイドルマスターミリオンライブシアターデイズ(以下、ミリシタ)。同じアイドル育成ゲームでありながらそれぞれ違った想いで2018年を迎えた。

 

 

彼女たちの成長はストーリーとして配信される。ミリオンではアイドルにとどまらず役者として活躍することがあった。ヒーローやエイリアンなど多種多様な役柄に挑戦し、話題を呼んだ。

しかしミリシタでは役者の仕事は全くなく、普通のアイドルとして活躍する日々が続いた。伝統を継がず、全く新しい世界になったのかと思われるがそうではない。例えばイベントストーリーは再編集されたものの以前ミリオンで使用されたものを引き継いでいる。

イベントストーリーに関連する楽曲をミリシタではリズムゲームとして提供した。ストーリー、キャラクター、そして携帯ゲームでは関連性が薄かった楽曲。この3つがより密接的になり、相乗的にゲームを盛り上げた。

引き継がれたストーリーを提供する一方でオリジナルのイベントも開催された。ミリシタで新規作成された楽曲も配信され、本格的に始動した瞬間であった。ただストーリーは普通のアイドルらしいものだった。もうミリオンでは当たり前だった役者として活躍するストーリーは来ない。そう思われた。

 

 

初めて年を越したミリシタは4回目の新規イベントが開催されることになった。

何かこのイベントは違和感があった。まるで忘れ去ろうとした記憶が急に蘇ってきた感覚に近かった。

このイベントはホラーを取り入れた演劇の仕事をこなすものだった。レッスンの光景がイベントストーリーで描かれているが発売された劇中歌のCDにはドラマパートとして演劇が収録されている。

そう、ミリオンでは当たり前だったアイドルだけに縛られない役者兼業の仕事が帰ってきたのだ。でもまだ飛びぬけた話ではなかった。

 

6回目の新規イベントは特撮魔法少女のお仕事だった。魔法少女と言われて何を想像する。普段は少女だが悪と戦うときは魔法少女に変身するとかだろう。ターゲットとしては幼少期の少女達であろうか。

ではこの魔法少女はどうだろうか。劇中歌である「ZETTA × BREAK!! トゥインクルリズム」はタイトルからし魔法少女らしからぬ雰囲気だ。それもそのはずバンドが絡む激しいメロディーが流れる。さらに「その企画ダメ出しで、お蔵入りにしちゃうよ」などこれまた魔法少女らしからぬ歌詞が飛び交う。これだけでも少女向けではないことがよく分かる。強いて言うなら会社で闘う成人向けだ。

魔法少女トゥインクルリズムの1人である中谷育。純粋な小学生である彼女はこの仕事に憧れていた。台本に目を通し、喜んでいた彼女が呟く「なんかおもっていたのとちがう…」は大人も同意するようなとても辛辣な一言だった。返す言葉が見当たらずどこか目を背けたい感じがした。

でも彼女には申し訳ないがこういうイベントを求めいたのは否定出来ない。いつの間にかこの型にはまらない意外性が刺激となっていた。それはどこか後ろめたい気持ちでありながら快楽を得る中毒症状に似たような感覚だった。

 

 

こうして役者の仕事も継承したかのようにミリオンは3月にサービスを終了した。引き継がれたミリシタはまた新しい形で役者の仕事が始まった。ミリオンを知る者にはどこか帰ってきたような感覚であろう。ミリシタから始めた者は意外性が新鮮だったであろう。

アイドルにとどまらず役者として力を入れるその無限の可能性がゲームより熱くさせる。そして気が付けばその可能性を楽しみにイベントが待ち遠しいものになっていた。