表現のつまみ食い

表現のおいしいところをつまみ食いするエッセイです。

スパらッティ

 「寿司屋で寿司を食べないのは邪道」。小さい頃そういうことを口走り、回転寿司ではひたすらにぎりを取り続けていた。

 

 そんなよく行った回転寿司チェーンのくら寿司に立ち寄った。家族の年齢が増してきて、ファミリー向けなこのお店に訪れるのは久しぶりだった。鮮度維持の特殊なお皿と注文レーンの新規設置があったことは覚えており、そんなに時間は経ってない印象だった。

 ただメニューを見ると久しぶりなのが伺えた。特にサイドメニューはカレーだけだったのが、牛丼、コーヒー、ハンバーグなどラインナップ豊富になっていた。新しいものを見つけるたびに騒いでいて、浦島太郎になっていた。

 盛り上がりが落ち着く一方で、寿司ネタが小さく少々悩んでいた。そんなときにサイドメニューの存在を思い出し、改めてメニューを見返した。その中で気になる斬新なものを見つけた。普通のラーメンも気になったが、どうせ試すなら新しいものにしようと思い頼んでみた。それがスパらッティ カルボナーラ味である。

 

 スパらッティは普通のラーメンと同じで、器だけでなくちゃんと汁が入っていた。麺は細い中華麺で、他のラーメンと同じか似たような種類だった。汁はカルボナーラ風のチーズ風味で、スパゲッティとラーメンの異次元の組み合わせなのがよくわかる。名前のスパらッティもスパゲッティとらーめんの造語であろう。

 新たな試みな一方で、味はどうだろうか。これも意外だった。中華麺が邪魔することなく、カルボナーラがやや強調するようだった。ただそれが程よく中華麺をパスタと認識するようで、はにかむ表情で口にしていた。美味しい、これはまた食べたい。

 

 気がつけばくら寿司のサイドメニューの虜になっていた。スパらッティに続けて、とんこつラーメンを頼んだり、つぎ来たときは何を食べようかと考えていた。サイドメニューだけ食べて、お寿司を食べずに店をあとにする。そんな日が近々来るかもしれない。