八景シリーズ
一つひとつを楽しんでもらいたい
最近の画像加工はより容易くなった。複数枚をひとつの画像にまとめることもでき、手軽さと加工の楽しみが画像の流行にもなっていた。
でも一つひとつを楽しんで貰いたい。いままで写真展や作品集を見ても、一つひとつを大切にしていた。ひとつだけで何を表現し、一つひとつの移り変わりはどんななのか。また何気ないカットを小さくするより、ひとつとして置いたら関連があると気づいてくれるのではないのか。
古典的ではある。でもその伝統的な楽しみを知っていて、それを取り入れたい。そんな考えで習作をはじめとした作品は、一つひとつを大切に投稿している。
限定的な並びへ
地元を離れて遠くへ。最近は定期的に行うようになった。
他路線での活動は時間が限られ、移動だけで労力を費やす。そういったことを賞賛して貰いたいのと、一つひとつを楽しんでもらいたい。そうして出来上がったのが、近江鉄道の写真になる。Instagramで4/24〜5/4の11日間に22作品を並べた。
習作を挟むようにして現れた22作品。少し気になることがあった。習作の中に地方私鉄があると違いがはっきりする。ただ自己の思いが強くなり過ぎていると感じた。
具体的に長すぎて見せ場がなくなってきている。確かにどれも大切でどれも見て欲しい。でも長すぎてわからなくなって来た。せっかくの大きなテーマに特別感がなく、習作のようになっていた。
そう思い、習作とは別のシリーズを設けることにした。内容も縮小して、より習作との差別化を図った。そして誕生したのが4日間8作品にまとめた八景シリーズになる。
こちらの近江八景は八景版に再編集しました
物語的な並びへ
八景の由来だが、これは日本の風景版画のシリーズものを参考にしている。特に川瀬巴水先生の「東京二十景」は日常的な風景を二十景としてまとめていて、題名だけでなく、作風も参考にしている。
そんな八景シリーズも回数を重ねるごとに形を変えている。現在は並べ方にテーマを設け、それにふさわしいものを選んでいる。時系列通りの作者の体験とは違い、作者の伝えたいものを重点を置くようになった。
「座席八景 拝島ライナー」から並びを重視してみたが、組み立てているうちにテーマが鮮明になってきた。なにが必要で、見せ場や転機はどんなもので、足りないところは他に代用できるものはないのか。
今まで曖昧で無造作につくっていた写真が、次第に一つひとつに意味を持つようになってきた。写真づくりもどこか八景を意識するようになり、作品のテーマがつくっていくうちに見えてきた。
形を変え続ける作品。当たり前で不透明だったものが、どこか繋がるものに変わろうとしている。今後は八景シリーズを中心にまた違う作品が出てくるのかもしれない。