表現のつまみ食い

表現のおいしいところをつまみ食いするエッセイです。

乗り越えた先の喜び(色づく世界の明日から)

 まだまだ語り足りない。アニメ「色づく世界の明日から」が完結してブログを1つ更新してみたが、不完全燃焼な思いが残り、また1つ書くことにした。断片的に書きたいことはあったが、どうもまとまりがないと感じ、もう一巡して話を再度整理してみることにした。

  この物語は月白瞳美(以下、瞳美)が過去へタイムトラベルをするところから始まる。元々自身の才能が母親を傷つけてしまい、それがいつしか自身にも才能が牙を向きはじめていた。自分が見る世界には色がなくなり、色を取り戻す試みをすることはなく、いつしか彼女にとって色のない世界が日常となっていた。そして無意識的に母親との思い出のせいか、ほとんど誰とも関わることはなく、傷をつけずにひとりで生きていくことを決めていた。

 

 そんな第1話から一気に見終えたが、最終回の瞳美はいつしか色づく世界を手にしていた。それは彼女が過ごした過去での経験なのか、冒頭の心境とは大きくかけ離れたものだった。色への興味、そして誰かと関わることの大切さが大きな要点であり、変わったところだろう。

  何故ここまで大きな変化を手にしたのか。一番は瞳美が仲間と過ごした日々にあると思う。瞳美は過去にたどり着き、そこで同世代の仲間と出会った。初めは引っ込み思案だったが、徐々に仲間たちと打ち解け合っていた。いつしか言いにくかった過去のこと、そして色がわからないことを打ち明けるようになっていた。そして仲間もそんな瞳美を受け入れていた。

  ときには辛い日もあった。初めは嫌いだった才能が段々と好きになったが、それでも誰かを傷つけてしまうことがあった。そんなときに仲間たちが助けたりもして、また違った視点を得ることができた。傷ついた方も実は傷つけてしまったと反省する一方で、成長するきっかけにもなり、互いが大きくなろうとしていた。

  他にもいくつかその様な場面があり、ときには逃げだしてしまうこともあった。でも最後はちゃんと向き合いながら解決手段を探していき、そんな勇気ある行動がより硬い絆を作り、いつしか未来へ帰るのを拒むことにも繋がっていった。そんな乗り越えて手にしたものを手放すのが寂しくなるのは瞳美だけでなく、いつしか最終回が来て欲しくない、このまま日常が続いて欲しいと密かに思っていた。そんなことに待ってはくれなかったが、瞳美と共にまたひとつ大きなものを手にしていた。

  そして終盤の瞳美はいつしか大きな存在になっていた。決心を固めたものの、少し戸惑いがあった祖母に対しても攻めることはなく、瞳美は許し、労るようだった。そして楽しい日々だけでなく辛い日々にも前向きな気持ちを告白している姿がとても印象的だった。楽しいこと、悲しいこと、辛いこと、嬉しいこと、そのことが全てが繋がっていて、気持ちひとつでどうにかなるとも思えた。その発見は瞳美だけでなく、我々にも本当に大きな発見だった。

 

 色々なメッセージがある中でも、最終回は特に考えさせるものがあった。特にあれだけひとりを好んでいた人間がいつしか仲間と関わり合うように変わっていく姿が、自分のようにも感じるほど素敵な作品だった。楽しいことだけではなく、その表裏一体となっていた感情があることで、やがて大きな存在になっていくのかもしれない。