表現のつまみ食い

表現のおいしいところをつまみ食いするエッセイです。

徒然草の入口は「花ざかりWeekend✿」

4人の成人女性で結成された4Luxury。彼女らが歌う「花ざかりWeekend」は同世代に向けたような歌だ。昼は普通のOL、夜は輝く女性に変身する日常が描かれている。

この歌詞には徒然草、特に第百三十七段を参考とされているようだ。入門書として読破した「すらすら読める徒然草講談社文庫)」でもこの段の現代翻訳と解説がある。作者 吉田兼好の世間に対する見方が伺える話であり、事細かくその思いが記されている。

この第百三十七段の話は入門書で触れて貰いたい。今回はそもそも徒然草とは一体どんな作品なのかを見ていきたい。

 

作者である吉田兼好兼好法師の方が馴染み深いであろう。元々役人であったが、30歳の時に世間から身を離れ、僧になった。諸説あるが、この話が有力とされている。

そんな徒然草だが、少し触れた通り自身の日常的な出来事を題材としている。それを客観的に振り返り、世間への教訓として記されている。また自身のことだけでなく、他人から聞いた話も取り扱っている。特にあらゆる娯楽の名人達が残したメッセージはただ格言にとどめず、持論を交えて嚙み砕いているのが魅力的だ。

哲学書に近いが、そこまで身を引き締めるものではない。日常的な面白い話も取り扱っているので、現代のエッセーに近いかもしれない。

入門書で一部取り扱ったものだけ見るとどれも興味深かった。どの話も今でも通じるような出来事ばかりであり、本当に古典文学なのかと疑うものもあった。進化したのか、それとも変わることがないものなのか。その予想外の流れに思わず笑う場面もあり、一方で納得する場面も多かった。

 

徒然草で様々なメッセージを記しているが、一番感じたのは「思い立つ」の存在だ。人生の一大事を行うときは例え中途半端であろうと、捨てなければならない。そんな自身の行いを徒然草第五十九段でも述べている。それは火事で家が燃えていながらも逃げようとしない人間を例えるぐらいなのだから。

吉田兼好自身が役人を捨てて僧になる決断は大きな出来事であり、人生の一大事であろう。ただ思い立って僧になることで見えてきたものは多かったと感じた。

このことは4Luxuryのメンバーにも共通している。元先生の桜守香織、元看護士の豊川風花、元事務員の馬場このみの三人。憧れてを抱いていたが、いざアイドルになろうとするときは一大事であろう。さらに事務所に所属する多くのメンバーが学生と考えると、二十歳を越えたアイドルにはプレッシャーがあったかもしれない。でも乗り越えた先に見えてくるものを考えると、その思い立った行動が吉田兼好に通じるものがあると考えられる。

そしてこれは徒然草や創作にとどめず、私たちにも通じることがあろう。「老後になってから楽しむ」。この台詞に対し、果たして無事迎えることが出来るのだろうか。

 

 教訓を記した徒然草。読みやすい入門書が数々出版されるのも納得し、そのおかげでこうして現代でも楽しめた。数々の教えは時代の重みだけでなく、現代でも通じるものがある。その普遍的なメッセージが今でも親しまれる秘訣かもしれない。



『すらすら読める徒然草』,講談社文庫

『徒然草』の59段~61段の現代語訳,2018年9月6日アクセス

吉田兼好 - Wikipedia,2018年9月6日アクセス