表現のつまみ食い

表現のおいしいところをつまみ食いするエッセイです。

王座に君臨する舞台少女(少女☆歌劇レヴュースタァライト)

初めから首席に君臨する者とはどんななのか。そもそも物語にはこのようなキャラクターが主役には来ないせいか、イメージが湧いてこなかった。首席を維持するより、首席を奪おうとする方におもしろさがあると思う。

ただアニメ「少女☆歌劇レヴュースタァライト」では主人公より首席に君臨するものの方が気になった。美しさはもちろんだが、どこか引き付けられるようなものがあった。気が付けば彼女は何故首席になったのか、そちらにフォーカスがあたっていた。

 

 

アニメ「少女☆歌劇レヴュースタァライト」に登場する首席 天童真矢。「This is 天童真矢.」を決め台詞としている彼女は父が高度な舞台俳優、母がプリマドンナ(オペラの主役女性歌手)の間に生まれた演劇界のサラブレッドである。演技はどこか他を寄せ付けない圧倒的な美しさを秘めていて、サラブレッドと呼ぶにふさわしかった。

序盤では主人公 愛城華恋が羨むような存在であった。しかしある日を境にどこか愛城華恋を警戒していた。クラスのもう一人のエリートである西條クロディーヌはその発言に対して疑っていたが、彼女の感覚的な鋭さあっての発言であろう。 

 

 

改めて彼女を主軸としてストーリーをさかのぼり、彼女が首席に君臨する理由を探ることにした。そもそも主人公を引き立てる脇役のため、登場シーンはもとより台詞も少なかった。でもいくつか気がかかりな台詞は見つかった。

例えば6話での台詞。

 

「最高の自分で居続けなくてはならない使命感」

 

これは家業が日本舞踊を専門としている同級生が学園を去ろうとしたときのことだった。畑違いではあるものの、親が舞台関連の仕事で活躍されていることに親近感を持っていたであろう。そういうこともあって少し残念そうに語っていた。

ただ口からこぼれた台詞にはどこか重圧的なものを感じた。これは才能と評価されることが絡んできそうだ。

いくらサラブレッドとはいえ、同じ人間であることには変わりない。でも彼女に対する評価は普通の人間とは違ってくる。成功すれば両親のおかげと称賛され、失敗すればサラブレッドなのに批判される。

そういう親の才能に応えるために最高の自分をつくりあげているようにも捉えられる。でもそれだけではなく、自分に対する評価が絡んでくるからこそ、最高の自分を作り上げるのだと思う。それ故の使命感かもしれない。

 

 

その一方で4話ではこんな台詞も出てくる。

 

「私 嫉妬深いんですよ 誰よりも」

「自分以外の人間がトップスタァになるなんて考えただけでも嫉妬で狂いそうになりますから」

 

こちらはもう一人のエリートである西條と放課後の練習を付き合ったときのことだ。西條は子役時代からずっと舞台に立っていた。他の学生と比べたら群を抜いた経験を持っているであろう。

その一方で敵視する人物がいた。それが首席 天童真矢である。彼女にはどこか自分を上回るような輝きを持っていたであろうか。そのせいか学園の首席を明け渡して、自身はその次席となった。

その後彼女とオーディションで一戦交えたが、こちらでも敗北となった。しばらくの間敗北への影響か不調だったが、ようやく調子が取り戻しつつあった。

そんな中彼女は表れた。合同で練習することとなり、調子が戻ってきたのかいつもの嫉妬で噛みつくように、彼女がオーディションに参加した理由を聞いた。その時にさらっと口から出て来た台詞だ。彼女の内に秘めた強欲な気持ちを知り、苦笑いを浮かべながら次席は吐露した。

 

天童の原動力は恐らくこういうことかもしれない。自分が一番になることを自分から望むように行動し始めたと考えられる。

それは周りからの称賛に応えることや批判を避けることではない。むしろそれらを超越してしまったのだ。常に自分が一番で居続けるために惜しみなく注ぎ、それが快楽に変わっているようにも捉えられる。いつしか誰かの為ではなくなってしまった。

 

 

孤高を貫く天童真矢。脇役ではありながら彼女の存在感は目を見張るものがあった。その謎を解こうと試みたら、主役になれないながらも気になる台詞がいくつか見つかった。彼女を知ったことで別の王座の道が見えてくるかもしれない。