表現のつまみ食い

表現のおいしいところをつまみ食いするエッセイです。

昔探しが捗る路線

 もうあの頃の路線じゃない。9000系が退き、渋谷駅がターミナル駅をやめてからしばらく経った東横線。渋谷と桜木町を往復するだけだったのが、今では新宿や池袋を抜けて川越や所沢さらには秩父にも行けるようになった。もう知っている路線ではないようだった。

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東急9000系 

 

 元々渋谷〜桜木町間を結ぶのが東横線だった。それが今では横浜から桜木町ではなくみなとみらい、横浜中華街を結ぶ。渋谷が終着駅だったのも昔のこと。大半は新宿、池袋さらには川越や所沢などへ向かうようになった。

 乗ってみるとこれが本当によく分からない。渋谷方面の行先は「森林公園」、「石神井公園」など聞きなれない行先が飛び交う。車両も赤と銀色だけだったのが、茶色、青、オレンジなど多種多彩なラインナップとなった。既に数年経ったものの、染み付いた慣れが足かせとなり、未だに理解できていない現状だ。

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自由が丘で西武6000系を待つ東京メトロ7000系

 

 さて新しくなった東横線。もうあの頃、渋谷と桜木町を往復するだけの面影はないのだろうか。

 実は降りてみると変わってくる。横浜方面だと反町から廃止となった路線が遊歩道として歩くことができる。一方、渋谷には旧駅舎を取り壊し、新しく複合施設渋谷ストリームができた。お洒落な飲食店が立ち並ぶフロアに、何だか金属の線が埋め込まれている。これは当時の線路配置を一部復元している。こんなところにも当時の面影が残ったりもする。

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高島山トンネル(旧線)

 

 終着駅それぞれが当時の面影を残すが、それだけでない。田園調布には西洋風の駅舎が今も残されている。田園調布駅は駅改良工事に伴い、一度旧駅舎は取り壊された。しかし、地元住民の要望で10年のときを経て復元された。

 はじめてこの駅舎を見たとき、この街にふさわしい建造物だと思った。田園調布はそもそも昔と変わらず、閑静な住宅街を保っている。そのせいかこうした駅舎が街の中心にあると落ち着く。この街と共に末永く残って欲しい、そんな建造物と今でも思う。

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田園調布駅旧駅舎 

 

 あの頃の面影はない。そう思って駅を降りてみると意外と残っていたりする。乗るよりも降りてみたくなる、そんな路線だと思う。