表現のつまみ食い

表現のおいしいところをつまみ食いするエッセイです。

進化する共通化された車両

鉄道車両が好きと言われてどんな車両を想像するか。カッコいい流線形が速さを物語る新幹線、残り僅かでも懐かしさに浸りたい旧型気動車、昼間の鉄道に飽きた先にいた保線車両。好みの車両ひとつでマニアのドラマが色々見えてくる。

そんな私は根っからの通勤車両好き。地元路線が東急のせいか通勤車両の中でも大手私鉄会社のものが好きだ。新幹線や特急列車といったカッコいい列車よりも普通の電車に興味を持っていたので、案外変わり者かもしれない。

 

通勤車両ひとつでも範囲が広く、旧型から最新型まで様々な年代の車両がいる。年代が異なると当時の思想が色や形で車両に反映される。その為同じ路線でありながらも様々な車両が入り混じて見える。

物心ついた時には当分の将来が約束された車両よりも個性を色濃く残した旧型車両に関心を持っていた。でも最近は新型車両に興味を持ち始めてきた。新型車両は部品の共通化が進み面白みに欠けると言ったこともあった。何がきっかけだったのか。

JR東日本E235系とそれをベースとした東急2020系を例にしてみる。 

E235系JR東日本の最新型車両として活躍している通勤車両だ。大型の前面ガラスにドット柄のグラデーションマスクが次世代の車両を象徴している。現在は山手線で活躍しており、順次この最新型車両へ置き換えを進めている。

E235系をベースとして登場した東急の新型車両2020系。丸みを帯びた前面で、側面は緑と白だけのシンプルなデザインとなっている。現在は田園都市線で活躍しており、こちらも旧型車両の置き換えを進めようとしている。

 

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JR東日本E235系

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東急2020系

 

まず外見に目を向けると似ても似つかない。JRが平たい前面に対して、東急は丸みを帯びた流線形になっている。会社の制約が絡むとは言え、全く同じには見えない。

内装は座席やその上に設置された3連の広告ディスプレイが共通化されており、これが一番分かりやすい共通部分だ。ただ乗ってみるとそんなことを忘れ、全く相反する列車に乗っている気分に陥る。JRがモノトーンの次世代を表現するのに対して、東急はフローリングでどこか優しさを表現するようになっている。

本当に似つかない兄弟を見ている気分になる。おまけに性格まで違うのだから病院で入れ違えたを疑いたくなる。ただ共通化されている部分もちゃんと残っており、納得がいかないと反論が続くであろう。

実は以前にも共通設計の車両をこのJRと東急で作成している。それがJRのE231系と東急の5000系だが、この車両が誕生したことにより首都圏の車両の共通化が進んだと言われている。そのデビュー作であるが変化はあったものの共通化の部分が気になる印象だった。

 

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JR東日本E231系

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東急5000系

 

あれから10数年が経ち、技術的な進化を大きく感じた。会社ごとの個性が強く出てきて、これが大きな違いとして表れてきた。ただ個性を全て出すのではなく、ちゃんと共通化されている部分も隠れている。この二つの違いが新型車両への関心をより強くさせたかもしれない。