表現のつまみ食い

表現のおいしいところをつまみ食いするエッセイです。

勝利への執念

戦いにはドラマがある。不敗神話も面白いが敗者に陥ったときも興味深い。連勝を知る敗者にも勝者に戻れるチャンスだってあるのだから。

競馬にもそんなドラマがあった。何度も苦しい状況に陥っても立ち上がる。そんな物語を紹介したい。

 

 

皇帝を継ぐ帝王

トウカイテイオー(以下、テイオー)は90年代に活躍した日本の競争馬だ。父であるシンボリルドルフ(以下、ルドルフ)が「皇帝」の愛称に対して、息子であるテイオーは「帝王」の愛称であった。

その名に相応しくデビュー戦から無敗を貫いた。いつしか無敗記録を持つ父を追うようになっていた。

 

背中を追い続けた先

3大タイトルを勝利したものだけが貰える三冠馬の称号。父ルドルフは三冠馬を手にしている。そんな背中を追うようにテイオーも三冠馬を狙った。

三冠馬になる条件である2戦を連勝した。しかし連勝後に骨折が発覚。最後のレースは出ることなく三冠馬への道は途絶えた。

 

不安の中、ジャパンカップ

骨折が癒え復帰するものの今度は連勝記録が途絶えた。さらに二度目の骨折が発覚して再び休養を取った。

二度目の復帰初戦は惨敗した。そんなレースに続いて世界の強豪馬が集うジャパンカップに出走した。惨敗したばかりなのに世界の強豪と戦うのだから不安だったであろう。しかしそんな不安を忘れさせるような走りを見せ一着を手にした。

 

故障発覚後の一年 

世界の強豪との戦いを征したテイオー。一年の締めくくりである有馬記念に出走した。しかし期待を裏切るような惨敗。その後故障が発覚して休養に入った。

秋を見越して調整したもののまたしても骨折が発覚。気が付けば復帰は一年ぶりの有馬記念になった。

過去一年間の休養を経て有馬記念を勝利した馬はいない。そんな話が飛び交っていた。けれども一年間の調整の甲斐があり復活勝利となった。この常識を覆した93年の有馬記念は今でも語りたくなる人は多いであろう。

 

ニコニコ大百科 「単語記事:トウカイテイオー」(参照2018-7)

トウカイテイオーとは (トウカイテイオーとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

 

 

勝利への執念

何度も故障に見舞われたテイオー。しかしその度に休養を取り、調整を怠らなかった。苦しい場面が続いても勝利への執念は忘れなかったであろう。

その思いが実ったように勝利を手にした。苦しい想いが一気に解消され、報われたようだった。

困難が続いても勝利への執念を忘れない。これは勝利に必要な想いであろう。そして困難の末に手にした勝利は今まで感じることが出来ないものだと思う。